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☆  あい らぶ    LAB   ☆

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若い方の犬

young-dog

10年以上前になりますが、うちの前の国道の歩道に1匹の茶色いワンコが
街路樹に繋がれていました。もうすっかり成犬で、ちょっとスネたような
顔つきの犬でした。痩せこけて、どうみても幸せそうには見えませんでした。

お向かいのお医者さんに来ている患者さんが繋いでいるのかな、と
思っていたのですが、なんと翌日もそこにいるんです。
びっくりしておそるおそるお水をやりました。ゴクゴクッといっぱい
飲みました。うちのワンコのドッグフードを与えたら、不審そうな
顔をしながらもバクバク食べました。いったいどこのわんこだろう。

その時、我が家にはすでにチビという雑種がいましたし、2匹目なんて
想像もしていなかったのですが、なかなか飼い主も現れないようなので
思い切って、うちに連れて帰りました。

そして、先住犬チビとのご対面(^o^)
どちらも戦々恐々としながら、でも通じ合うものがあったのか
あまり激しいケンカをすることもなく序列は順当に決まりました。
一応シャンプーをしてやり、病院へ。血液検査などをしてもらいました。

結果は……。ひどいフィラリア症でした。もうすでに末期に近いような
状態だったそうです。まだ若いのに、かわいそう。
でも日に日に元気を取り戻してくれました。初日に出会ったときの
ひねくれた表情はいつのまにか穏やかな顔に変わってきました。
うちに来て良かったのかな、それにしても飼い主の方はどこに。

おそらくすぐに飼い主の方が引き取りに見えるだろう、と予想して
いましたので特に名前もつけずにそのままうちでお世話していました。
1ヶ月が過ぎても誰もわんこの問い合わせをしてきません。
おっかしいなぁ・・・。

今思えばもっと早くちゃんとした名前をつけてあげればよかったと
ちょっと反省しています。先住犬のチビと対比させて、私達はその
わんこのことを「若い方の犬」と呼んでいました。
いい加減な呼び方ですね(笑)でもチビと同じくらい可愛がって
いたんです。たとえよその子でも今はうちの子だから。

数ヶ月が経過したころ一人のおじいさんがやってきました。
「昨日、表の街路樹に犬をくくりつけておいたんだけど
あんたさん、知らんかな、茶色い犬なんだけど」と。
なぬなぬ?昨日ですって?じーさん、もう何ヶ月も経ってるよーん。
話を聞くとお散歩の途中で、何かを思い出し、そのままわんこを
街路樹にくくりつけて、そのまま忘れてしまったそうです。
(後日ご家族に聞いたところによると老人性痴呆症だったそうです)

きっとそれはうちの「若い方の犬」だろうと予想できましたが
もうすっかりうちの子になってしまっているし、お返しして
またどこかで置き去りにされるのも可哀相と思い、おじいさんには
「そんな犬いませんでしたよ」と言ってお帰り頂きました。
申し訳ないことをしましたがどうしようもありません。
若い方の犬にとってはどっちの家で暮らすのが幸せだったか
今となっては誰にもわかりません。


3年弱、我が家で暮らしましたが、最後はフィラリアが悪化して
呼吸困難となり、手術もして一時は回復しましたが、あっけなく
逝ってしまいました。
最期の日、病院のケージの中で看取る者もなく逝ったそうです。
うちに連れて帰ってくれば良かった…と悔やみました。

動物病院の花模様の箱に入った若い方の犬はとても軽かったです。
お花屋さんでキレイな紫色の花束を作ってもらい、供えました。

最後の最後まで名前は「若い方の犬」のままでした。
ごめんね、でもありがとう。




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